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会報の巻頭言を先行発信2025.9.5更新

 最近、タンチョウ保護研究グループが活動の目的としていることに対して、釧路を舞台に全く後ろ向きなニュースが流されています。タンチョウの保護活動と自然エネルギー利用のための活動を、まるで相容れないもの、対立するものとして扱うSNSやメディアの氾濫です。そこで、タンチョウ保護研究グループの代表としての考え方を会報に投稿しましたので、会報の発行に先駆けて以下に発表させていただきます。

 私がツルと向き合うようになったきっかけは、縁あってアメリカの国際ツル財団(ICF)で半年間過ごしたことに始まります。G.Archibald博士が友人だったR.Sauey氏と共にWisconsin州BarabooにICFを設立しました。現在、Archibald博士は理事としてタンチョウ保護研究グループの活動に参加してくださっています。彼がICFの活動拠点をBarabooに選んだ理由の一つは、彼が傾倒していたA.Leopoldの活動現場に近いことがあります。ICFに滞在中に私はLeopold記念保護区に何度も通いました。この保護区はLeopoldの名著Sand County Almanacの舞台で、博士のお嬢さんであるN.L.Bradry夫妻が管理していました。そしてA.Leopoldの提唱したLANDETHIC(土地倫理)につながる野外セミナーが毎週開かれていました。

 LeopoldはLANDETHICについて「ヒトという種の役割を、土地という共同体の征服者から、単なる一構成員、一市民へと変えるのである。これは仲間の構成員に対する尊敬の念の表れであると同時に、自分の所属している共同体への尊敬の念の表れでもある。(新島義昭 訳. 「野生のうたが聞こえる」より)」と表現しています。また同書の中で「この共同体という概念の枠を、土地、水、植物、動物、つまりはこれらを総称した「土地」にまで拡大した場合の倫理をさす」と説明しています。Leopold は同書の中でツルについてその種としての歴史を踏まえて、「人間が手のほどこしようのない過去、鳥や人間の背後にあって影響を及ぼしている幾千年という信じられない時の流れの象徴である」(同書より)と表現しています。

 私がこれまでツルと向き合ってきた歴史は、ツルを通してLAND ETHICという考え方に向き合ってきたと言えるのかも知れません。今私たちは、私たちの生活基盤でもある北海道の農地で餌を探しているタンチョウからLAND ETHICについて思いを巡らす機会を与えられているのでしょうか。地球で生きている先輩であるツルから学び、それをどう活かしていくか、それについての私たちの姿勢の重さをいま切実に感じています

                                    理事長 百瀬邦和






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